スズキアルトHA35SのCVTオイル交換作業
今回は、スズキアルトHA35SのCVTオイル交換作業をご紹介します。
この車両は走行距離が約5万キロとまだまだ少ないですが、新車から8年経過していますので、CVTオイルの劣化が進んでいます。
CVTオイルの交換は、1回だけではきれいにはなりません。
なぜかと言うと、内部構造上CVTオイルを抜いても古いオイルが抜けきれないためです。
ですから、新しいCVTオイルを注入しながら、古いCVTオイルを抜き取るという作業が必要になってきます。
では、CVTオイルを何回交換すれば元のようにきれいになるのでしょう?
今回は、車の構造がよく分からないという方のために、分かりやすく解説しますね。
劣化したCVTオイルを確認
まずは、CVTオイルを交換する前にオイルレベルゲージでオイル状態を確認します。
新品のCVTオイルは赤色ですが、劣化も進み茶色に変色しています。
このまま走行しているとCVT自体に不具合が生じてしまいそうですね。
次に車両をリフトアップして、CVTのオイルパンドレンコックを緩めてオイルを抜きます。
茶色く劣化したCVTオイルが出てきました。
後ほど確認するために、オイルを容器に取り出します。
走行距離55,000km、年式の割に走行距離が少ないですが、新車から8年が経過しています。
容器に抜いたCVTオイルを確認すると、茶色を通り越して真っ黒になっていてかなり劣化が進んでいます。
CVTのオイルパンをはぐってみると、、
このままCVTオイルの交換作業を進めても良かったのですが、きっと、鉄粉がかなり溜まっていると思います。
オイルの劣化が気になるのでオイルパンを外して中の様子を確認します。
まずは、オイルパンのボルトを緩めます。
オイルパンの中に溜まっているオイルがこぼれない様に、オイルパンをゆっくりと外します。
外したオイルパンがこちらです、左がオイルパン、右がオイルパンガスケット、そして上がCVT内部の摩耗した鉄粉を集めるためのマグネットです。
このマグネットがある事で、故障の原因となる鉄粉がCVTの内部に入り込んでしまう事を防いでいます。
このマグネットはとても強力です。
写真を見るとマグネットには、細かい鉄粉がかなり多く付着しています。
マグネットにも、オイルパンの中にも鉄粉がかなり付着していましたので、きれいに清掃しました。
もちろんオイルパン内部にも鉄粉がたくさん沈殿してましたので、きれいに清掃しました。
ストレーナーを確認
次は、CVT本体に装着してあるストレーナーを取り外します。
ストレーナーとは、簡単に言うとオイルの中にある不純物を取り除くろ過機のようなものです。
おそらくこのストレーナーの中にも鉄粉が溜まっていると思います。
このストレーナー自体が目詰まりすると、オイルが循環しなくなりCVTの故障の原因になります。
ストレーナーを取り外して、状態を確認します。
取り外したストレーナーを確認すると、中からドロドロのオイルが出てきました。
今回は、ストレーナーを取り外して、新品に交換することにします。
新品のストレーナーのOリング(ゴムのパッキン)にCVTオイルを塗って装着します。
ストレーナーがきちんと装着できたことを確認したあと、規定トルクでボルトを締めて完成です。
オイルパン装着
次は、オイルパンを装着します。
オイルパンを装着する際は、オイル漏れが無いようにオイルパンガスケットを新品に交換する必要があります。
写真は、新品のオイルパンガスケットです。
清掃したオイルパンの中に、先ほど清掃したマグネットを元の位置に装着します。
最初は、ラチェットを使い軽くボルトを締めて、そのあと規定トルクでボルトを締めて行きます。
1回目のCVTオイル注入!オイルのエア抜きも忘れずに!
いよいよCVTオイルレベルゲージからチェンジャー(CVTオイル交換専用機械)を使用して、規定値までCVTオイルを注入します。
CVTオイルが規定値まで入ったら、今度は電動オイルポンプのエア抜きを行います。
この電動オイルポンプに空気が入っていると、CVTオイルが正しく循環されません。
そうなると故障の原因となるので、専用の診断機を使って電動オイルポンプのエア抜きを行います。
作業サポートの項目から電動オイルポンプエア抜きを選択します。
診断機の指示通り、エンジンは停止状態、イグニッションスイッチはON、セレクトレバーはPの位置にします。
診断機を使い強制的にオイルポンプを作動させてエア抜き作業を開始します。
完了の表示が出たので、エア抜きが正しく行われました。
ここで、車両をリフトアップしてエンジンを始動したまま、P→R→N→D→L→N→R→Pとシフトレバーを動かし、その後DにしたままCVTオイルを循環し、CVTオイルが70度から80度程度上昇するまで放置したあと、オイルの状態を確認します。
ちなみに、新品のCVTオイルと一番最初に抜いたCVTオイルの比較写真です。
一番最初に抜いたオイルは真っ黒になっていますね。
そして、新品オイルと今入れたばかりのCVTオイルを再度抜いて比較した写真がこちらです。
まだまだきれいになったとは言えませんので、もう一度CVTオイルを抜いて新しいオイルを循環します。
続いて2回目のCVTオイル注入!
循環したら2回目のCVTオイルを抜きます。
新品のCVTオイルと2回目に交換したCVTオイルの比較写真がこちらです。
見た目はまだまだ変化がないようです。
まだまだ~!3回目のCVTオイル注入!
そして、3回目のCVTオイルを注入して循環します。
新品のCVTオイルと3回目に交換したCVTオイルの比較写真がこちらです。
かなりきれいになってきました。
これでもか!4回目のCVTオイル注入!
4回目のCVTオイル注入!
さらに、4回目のCVTオイルを注入して循環します。
新品のCVTオイルと4回目に交換したCVTオイルの比較写真がこちらです。
見違えるようにきれいになりました。
5回目でバッチリきれいになりました!
ここまできれいになったので、最後に5回目のCVTオイルを注入します。
そして、オイルレベルゲージを使ってCVTオイルの汚れを確認します。
バッチリきれいになりました。
このあと、診断機と実際の走行テストを行いCVTが正常に作動しているかを確認しましたが、特に不具合もなく正常に作動していました。
CVTオイルがきれいになった事で、燃費も良くなると思います。
お客様にも喜んでいただき、「愛着がある車なのでまだまだ乗り続けますね。」と言っていただきました。
まとめ
今回はスズキアルトを使ってCVTオイルの交換作業をご紹介しました。
CVTオイルは1回のオイル交換では、なかなかきれいになりません。
CVTは、内部構造が複雑なため、まだ取りきれていない劣化したオイルが溜まっています。
ですので、何度もCVTオイルを抜き取って、再度新しいCVTオイルを注入しました。
今回は5回目できれいになりました。
もちろん車種や年式、CVTオイルの劣化具合でオイルの抜き取り回数も変わってきますのご注意ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。